家づくりのことを調べると、最近よく目にする高気密高断熱住宅。
いいことがたくさん書いてあるし、でも費用は掛かりそう、長い間住むマイホームのことと考えると費用をかけてでも高気密高断熱にした方が良いのかな、と検討される方も多いと思います。
でもいいことばかり?
デメリットはないの?
そんなに簡単に手に入るの?
などの疑問も出てくるはず。
その中でも、もし手に入れようと決心された時、間違いのない、失敗のない高気密高断熱住宅の見極め方のうち、なんちゃって高気密高断熱になってしまった事例を2つお伝えします。
高気密高断熱住宅の知られにくい2つの事実
高気密高断熱住宅には、知られにくい2つの事実があります。
なんちゃって高気密高断熱の事例を知ることで、失敗を回避してください。
よくある高気密高断熱住宅の失敗
「業者は高気密高断熱と宣伝していたので建てたけど、冬はあまり暖かくなかった。」
そこで、よくよく調べてみたら高気密高断熱ではなく、中気密中断熱程度だった・・・。
という、悲しい事実。
失敗というより、騙された!と言いたくなりますね。
最近、このような業者は減ってはきていますが、実は高気密高断熱にははっきりとした基準がないというのが原因です。
例えば、断熱材が〇〇cm以上なら高断熱、というような明確な基準がありません。
そればかりか、今のところ(2019年5月現在)日本には断熱をしなければいけない義務すらありません。
建売やハウスメーカーのカタログなどに、次世代省エネ基準標準装備などと書かれているのを目にしますが、実はこの基準は高気密高断熱というには少々おぼつかないレベルです。
断熱材の厚さ、窓の性能などから世界の断熱先進国の基準と比較すると、20年~30年遅れていると言われています。
ちなみに、次世代省エネ基準というのは、義務ではなく努力目標です。
努力目標基準である次世代省エネ基準(世界からは20?30年遅れていますが)よりも上の性能であれば、高気密高断熱と言ってもいいような雰囲気があります。
ですので、業者が高気密高断熱と言っていても、実は中気密中断熱ということが起きるのです。
基準がない以上、依頼する側がしっかり見極める知識を持たないと、せっかくの家づくりが失敗になってしまう状況はしばらく続きそうです。
さらに、高気密高断熱で家づくりを考えておられる方には、わかりにくい点があります。
高気密高断熱住宅にはレベルがある
なんちゃって高気密高断熱2つ目の事例
高気密高断熱住宅には大きく3つの段階があります。
レベル1.とにかく断熱材を厚くして、窓の性能を良くしている、気密は今の基準よりは良くなっているが施工時の運任せとなるレベル。
レベル2.その地域に適した断熱量を備え、気密はC値1.0以下はらくらくクリアし、快適に生活できるレベル。
レベル3.2のレベルをクリアし、なおかつ優れた省エネ性を持つレベル。
さて、気をつけてください。
上の3つを普段建てている工務店、ハウスメーカー、設計事務所はどこも、自社の住まいは「高気密高断熱」と言っています。
見極めができますか?
一つ間違えると、失敗になってしまいかねません。
高気密高断熱住宅のレベルとは?
1.のレベルは断熱材の厚さとか樹脂サッシを使い、トリプルガラスを使うなどスペックは十分高機密高断熱住宅にはなっているかもしれませんが、地域性を考えずに設計しています。
地域性というのは、例えば同じ京都府でも、京都市内の環境と山間部、日本海側では全く気候特性が違います。更に、同じ地域でも敷地の形状、開放されている方角、隣接する敷地の建物の状況、など考慮しなければならない点は多岐にわたります。
にもかかわらず、同じ京都仕様ということで同じような設計をしていては、表面上は立派なスペックでも、ムダやムラだらけで力ずくで高気密高断熱にしています。
高気密高断熱の場合、室内の温度を維持しやすいというのが特徴となります。
この特性を十分理解して設計しないと、せっかくのこの性能がデメリットになってしまうのです。
窓の配置と太陽の動きを計算せずに建ててしまうと、夏の日差しが建物の中に入ってしまった場合、非常に高温になります。
一度温度が上がると、下がりにくくなりますので、夏は快適とは言えなくなるということです。
結果、エアコンがフル稼働という状態となり省エネとはかけ離れ、なんの為に高気密高断熱にしたのかわからなくなります。
これが、いわゆる温暖地でのなんちゃって高気密高断熱住宅ということになります。
高気密高断熱住宅の場合、断熱材やサッシの性能がいいという数字のスペックだよりに選択してしまうと、思わぬなんちゃって高気密高断熱を掴んでしまい家づくりが失敗、という罠があります。
こうした罠に引っかからないようにする為に、しっかりとした知識を身に着けなければなりません。
失敗しない設計事務所、工務店の見極め方
では、その次のレベル2とレベル3はどう見分ければいいのでしょう?
レベル2とレベル3には、明確な線引はありません。
というのも、レベル3を建てる能力がある設計事務所・工務店でも敷地の環境(道路に面する方角、土地の大きさ、周りの建物の状況)さらに、建設予算によって、レベル3にしたくてもできない場合もあります。
では、省エネではない?ということではありません。
高気密高断熱で省エネに度合いが大きい場合、自然のエネルギーをいかに使うかということに大きく影響を受けます。
特に、太陽のエネルギーは想像以上に大きいので、太陽のエネルギーを使いやすい環境であれば、省エネにしやすいですし、都心部など太陽のエネルギーを使いにくい敷地の場合、なかなか省エネできる住まいにはしにくいという不利な点もあります。
その見極めとして分かりやすいのは、1棟1棟シミュレーションをしているかどうかという点です。
今は、建物に入る太陽の熱量、家の中で使うエネルギーの熱量、断熱材の量、窓の性能などの条件を入力すると、その建物の断熱性能が数値で出てきます。
このシュミュレーションで使うソフトにより精度に差はありますが、まずは1棟1棟シミュレーションしていることが大切になります。
注意したいのは、モデルハウスでのシミュレーション結果で話を進める業者です。
「弊社の住宅なら、年間光熱費を〇〇安くできます。」
などと言うところもありますが、必ず実際に住む住宅でも算出してくれるかどうかを聞いてみてください。
モデルハウスとは、敷地の環境が違いますし、全く同じ建物を同じ方角で建てることはほぼ不可能です。
建物の性能は、少し条件が変わると違ってきます。
ですから、1棟1棟検証しなければなりません。
もし、モデルハウスの数値だけで話をする業者なら少し疑ったほうがいいですね。
同じように、気密測定を1棟1棟おこなっているかどうかも参考になります。
気密測定は、施工精度の問題になります。
これも同じように、モデルハウスでの数値では駄目です。
同じく、モデルハウスの数値で話をする業者なら即やめたほうがいいです。
モデルハウスでいい気密性を出せたからと言って、間取りも仕様もちがう建物が同じ気密性を持つかどうかなど誰にも分かりません。
必ず、1棟1棟測定しているかどうかは確認してください。
~このような機械で気密測定をします~
シミュレーションをしてレベル2をしっかりできる設計事務所・工務店であれば、レベル3をできる能力は十分あると判断しても良いと思います。
なんちゃって高気密高断熱住宅で失敗しない為に
お伝えしたように、世の中にはなんちゃって高機密高断熱住宅が生まれる土壌がまだまだ多くあります。
見極める方法はいくつもありますが、まずは1棟1棟、確実にシミュレーションで設計と検証しているかどうかが目安になると思います。
大量に建てるハウスメーカーが、高機密高断熱住宅に着手できない理由はここにもあるのかもしれません。
他にも、基準づくりも進んでいます「いい家の新基準とは?燃費で選ぶこれからの高気密高断熱住宅」を読んでいただければ、基準の一つが分かると思います。
温暖地域での高気密高断熱は、寒冷地とはまた違う進化をしています。
それぞれの土地に合わせた設計、施工をできる家づくりのパートナーを見つけて、失敗のない家づくりをしてください。