クルマを買うとき、今ではほとんどの方が燃費の数字を一度は見ますよね。
では、住宅に関してはどうでしょう?
多くの方は、
「住宅の燃費なんか分かるの?」
「人それぞれ使い方が違うのに・・・。」
「住宅の燃費???」
と思われるでしょう。
実は、日本でもようやく住まいの燃費を表示できるようになってきました。
燃費が良いということは、省エネ?太陽光発電を使うの?
などなどの疑問も出てくると思いますが、ここでは住まいの燃費が分かると、生活がどうなるのかも合わせてお伝えしていきたいと思います。
知って驚き!世界では・・・
「日本でもようやく住まいの燃費を表示できるようになってきました。」と最初に言いましたが、実は、ヨーロッパEUでは住宅の燃費の表示が既に義務化されています。
高気密高断熱先進国では、詳細な燃費が表示され、買う方、借りる方はその燃費の数字を選択基準の一つにしているのです。
家を購入、建てる場合でも、燃費が良い家と良くない家では当然評価が別れます。
これまでの日本での家の選択は、間取りやデザインが良い、耐震性が良い、素材がいい、○○工法だから、大手だから信用できる?・・・など抽象的な基準で考えられてきました。
その上で、高いか安いか・・・。
また、住宅の性能に関しては、各社が独自にPRしていたので、選ぶ側としてはどれが良いのか比較しにくかったと思います。
例えば、省エネにつながるだけでもネット上には、「ZEH」「超省エネ住宅」「外断熱住宅」「高気密高断熱住宅」「無暖房住宅」「低燃費住宅」「3リッターハウス」などそれらしき文字が並びます。
専門知識がない方が、この中から本当に省エネ性能が良いものを選ぶことができるでしょうか?
正直、ちょっと調べただけでは私でも選ぶのは無理です。
結果、選ぶ時は金額自体が判断の大きな部分を占めていたのではないでしょうか。
これからは、燃費という分かりやすい選択判断基準が加わります。
住宅の燃費って何?
ではその燃費がどのように表示されるかというと、年間を通して快適に過ごせるのに必要なエネルギー量が表示されます。
「快適に」というのが重要なポイントです。
何か倹約して電気代を節約してエアコンの使い方を制限したり、生活を窮屈にするということをイメージされるかもしれませんが、そうではありません。
あくまで普段の生活をし、しかも今よりも快適に健康的に過ごすのに必要なエネルギーの燃費を算出します。
燃費を良くするということは、住宅自体の性能をしっかりと最初に設計し、住む人がなにか無理をしたり、我慢をしたりする必要が無いようにするということです。
燃費を計算できるということは、外気の寒さ暑さの影響を受けないよう、しっかりとした断熱をし、せっかく暖めたり冷やした空気を外に漏らさないよう気密性をしっかり高めた高気密高断熱住宅が必要となります。
その上で、なお燃費を良くするには、自然の風も取り入れたり、無限にある太陽のエネルギーを上手に活用していくというエコな考え方も必要です。
機械も上手に活用したほうが良いのですが、機械頼りにはならないようにするのが前提です。
家の燃費は1リッター何キロ??
車の場合、1リッターで何キロ走れるか?で比較しますね。
住宅の場合、床面積1?を快適な温度にするには年間〇〇kWhが必要、または1棟あたり年間に○○GJ(ギガジュール)が必要という感じで表示されます。
電気だけではなく、ガス、灯油、その他も含めてエネルギー源をすべて同じ単位で数値化します。
ちなみに比較する時は、快適な温度として一年間を通じて室内温度を冬20度〜夏27度に保つことを想定します。
では実際にはどれくらいの数値が良いのでしょう?
これからのいい家の基準として目指したい数値は、一次エネルギーで100〜120kWh/?くらいは確保したいところですし、もちろんもっと上も目指せます。
※1次エネルギーとは
原油や原子力燃料、水力・太陽光など自然から得られるエネルギーを1次エネルギーと呼びます。
同じ原油から作られ、家では違う使う方をする、電気、灯油やガス(2次エネルギー)では、加工するときのロスや効率がそれぞれ違います。
それらのロスも消費するという考えがあるので、すべてを1次エネルギーに換算して計算します。
「と言われても・・・?」ですよね。
参考にこちらをご覧ください。
ちなみに、こちらから引用しています。
http://passivehouse-japan.org/ecomap/
上のグラフから右上に近づくほど性能が良いといえます。
引用したサイトの方で見てもらえれば、日本でこれまで建てられた住まいの水準がよくわかると思います。
省エネのための2つの基準
このグラフでは、2つの基準で住宅の性能を表示されています。
横軸はその家の燃費、右に行くほど燃費が良い家となります。
そして、縦軸はわかりやすく言うと健康リスクや快適性を表します。
理想を言えば、右上にしたいのですが、土地の条件やコストバランスもあります。
この右上の黄色の三角エリアの中で、どのあたりにするかが設計の腕に掛かってくるわけです。
これまでの住宅はエネルギーを垂れ流ししてきています。
昔は、世界中の先進国の住まいがそうでしたが、温暖化の問題が出て以降急速に省エネに転換しました。
それは、建物の性能自体を向上させてエネルギーの垂れ流しをやめようという試みです。
ところが、日本は国民性なのでしょうか、そこに住む人が頑張って省エネするようになりました。
使う部屋だけ冷暖房、使う場所だけ冷暖房をするということです。
ルームエアコンは、まさにその環境で技術革新したためにエネルギーを暖めたり冷やす効率は世界No.1の技術です。
ところが、この間世界では家全体で使うエネルギーを減らすように求められてきました。
欧米では元々家全体を冷暖房するのが普通でしたから、当然の流れではあります。
この日本の、使うところだけ冷暖房は思わぬ弊害が出てくるようになりました。
健康へのリスクが高まりました。
いわゆる、ヒートショック問題です。
暖かい部屋と、寒いトイレや浴室との温度差でヒートショックを起こしてしまうリスクが大きくなっているという問題です。
これに関しては「寒い家にガマンして住んでいる?高気密高断熱住宅が健康に優しい理由」で説明しています。
このようなこともあるので、これからの省エネはただ単に使うエネルギーを減らすだけの省エネと、快適に健康的に生活できるということを前提とした燃費表示で比較できるようにしなければなりません。
日本型の我慢するだけの省エネには、弊害があり限界があるとういことが分かります。
我慢が美徳であるというのは、昭和生まれの私にとってもよく分かるのですが、健康を害してまでというのはお薦めできません。
高気密高断熱住宅はこれからの世界的な流れ
燃費をしっかり計算することで、快適性も分かるようになるとお伝えしました。
世界の建物の専門家の考えは、大きな流れはそちらを向いています。
日本は、国民の我慢の省エネのお陰で、世界へ公表する住宅の消費エネルギー量は一見優秀に見えましたが、そろそろバレつつあります。
温暖化が問題になりだした頃、日本で使われるエネルギーのうち住宅部門は、一人が使う量が比較的少なく優秀と言われていました。
当然ですよね、日本人は昔から我慢することを美徳としていましたから。
しかし、世界的に省エネが進んだ今、日本の省エネ度合いに進歩がないと判断され、努力不足と言われるようになりました。
ところが、国民は比較的省エネ機器を取り入れたり、無駄な電気は消したり、照明もあっという間にLEDに替えたりと、かなり努力はしています。
「努力しているのに更にこれ以上??」
「もう無理!」
というところになり、ようやく国が気が付き?断熱を義務化しましょう、という流れになりつつあります。
しかし、日本の住宅においては、未だに断熱の義務基準はありません。
先進国では日本だけです。
中国にも、比較的高い断熱基準があります。
2020年遅ればせながら日本も義務化する予定でしたが、どういう訳か見送られました。
今回、国の基準は見送られましたが、世界的な流れはもう動いていますのでいずれ義務化されるでしょう。
さらに義務化される予定の基準は、欧米よりも20〜30年遅れています。
このことに気が付かれた方々は、早々に義務予定基準よりも高い性能の高気密高断熱住宅にされています。
日本の場合、国の基準はとても緩いので、それを守ればよいのか?といえばはっきり言ってNOです。
燃費計算をすれば明らかになります。
ちなみに、多くの住宅メーカーが標準としている性能はこのグラフの左下の水色のあたりです。
義務予定基準はこの辺りですので、全くお話になりません。
今住宅を建てたとして、その住まいは30年50年住まわれるわけです。
建ててから性能を良くするのは無駄に多くのコストが掛かります。
これから住まいを建てられる方は、ぜひ高気密高断熱住宅の情報をしっかり取っていただき、検討し納得の上で家づくりされるのが「いい家のススメ」からのお薦めです。